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インドネシア・西バリ国立公園周辺村における生活向上に結びつく環境教育推進

一般社団法人 あいあいネット

対象地域

 インドネシア共和国:バリ州ジュンブラナ県、同ブレレン県

背景

 対象地域の西バリ国立公園は、バリ島西部に位置する面積約1万9千ヘクタールの国立公園で、海辺や山を含む多様な生態系を育み、様々な植物・動物が生息している。この国立公園周辺には6つの村があり、約3万名が農業や漁業、観光業などに従事して生活している。しかし、降雨量が少ない中で天水に頼る農業が中心であるため、経済的な困難を抱える村人が多い。加えて、近年では現金収入を得るために国立公園や周辺の森に立ち入り、違法伐採や密猟にかかわる人が増えており、国立公園では対応に苦慮している。また、これによって、地域の固有種であるカンムリシロムク(ムクドリの一種)は絶滅の危機に瀕している。
 実施団体は、村人の生計向上と公園の自然保護を両立することを目指し、2008年度より活動を開始し、同国立公園と周辺の村人の協働関係の構築に努め、村人の意識の変化を促した。これにより、村人たちは少しずつではあるが、自然保護やエコツーリズム(文化、自然環境、歴史など地域固有の資源を活かし、地域の暮らしと資源が守られる旅行やリクリエーション方法)振興等の活動に取り組み始めている。
 同国立公園では、すでに小学校や中学校において環境教育を実施してきたが、さらに村人の環境への意識を高めるために、大人を積極的に巻き込む環境教育活動が必要と考えている。本事業では、生計向上に向けて、国立公園周辺の住民が周囲の自然を持続的に活用する可能性に気付くことを目的に、同国立公園と協力し、生計に繋がる可能性を持つ有用植物について学校の児童と教師、村人が調査を行い、絵本にまとめ、村の集会や学校の授業で共有する。

目的

 子どもと村人を対象にした環境教育(特に身近な植物についての知識・経験の世代間共有)を通じて、自然資源の保全と持続的な生計向上を振興し、国立公園と地元コミュニティとの間の協働関係を強化する。

実施した活動

@ 環境教育の展開に関するアクションプラン(具体的な行動計画)の作成 (国立公園職員と共同)
A 国立公園職員と村人による実行委員会の結成
B 実行委員会による村の有用植物の基礎的な情報収集の実施
C 実行委員会による子ども向けの植物調査ワークショップの実施
    (植物調査は大人を巻き込みながら子ども主体で行う)
D 調査結果をまとめた絵本の作成
    (計40種類の植物について、子ども計67人による92枚の絵と文章を掲載)
E 学校や村の集会での絵本の共有
    (計40部を作成し、各小学校、県教育文化局、村役場、林業省本省、各村の住民組織に配布)

成果

これまでは、国立公園職員による「子どもたちに自然の大切さを教える」形式の環境教育の授業が各小学校で実施されていた。今回のプロジェクトでは、子どもたちが自ら身近な自然の大切さに気づき、さらに周囲の大人を巻き込んでいくことを重視して、植物を観察して描くことと、その使い道を周囲の大人から聞き取ることを中心に据えた。
その結果、多くの子どもたちが大変熱心に植物の観察と大人からの聞き取りを行い、「自分たちの周りにはこれだけ有益な植物がある」と実感することができた。また、大人たちも身近な自然の意味を再認識するとともに、その知識が若い世代に伝わっていないことに気づくことができた。