フィリピンごみ山周辺地域における子どもたちへの読書推進活動およびライフスキル向上をめざした教育支援事業
対象地域
フィリピン共和国:ケソン市パヤタス地区、リサール州カシグラハン地区
背景
対象地域であるケソン市パヤタス地区やリサール州カシグラハン地区には、巨大なゴミ投棄場でごみ拾いをし、それを廃品回収業者に販売することによって生計を立てている「スカベンジャー」と呼ばれる人々が多く生活している。この地域で生活する子どもたちの多くは、親の失業、病気、両親の不和、家庭崩壊、薬物汚染など、貧困によって引き起こされる様々な問題に直面している。その結果、将来への希望を見いだせずに勉学の意欲を失い、学校を中退する子どもも少なくない。
実施団体では、1995年からパヤタス地区で、2000年からカシグラハン地区で奨学金支援活動を開始し、2010年度までに242名の奨学生に就学の機会を提供した。中には、家庭の崩壊や将来に対する絶望によって退会する奨学生もあった。実施団体では調査を行い、長期的・根本的に状況を改善するためには、住民や子どもたちが問題の本質を見極め、お互いに協力し、解決を図るための取り組みが必要であると認識した。
本事業では、子どもたちが日常の様々な問題や欲求に対し、建設的かつ効果的に対処する能力を身につけることを目指す「ライフスキル教育」を実施する。同時に、読書を推進して、想像力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけることを目指す。
目的
「読書推進活動」および「ライフスキル向上支援活動」を通して、フィリピン、パヤタス地区およびカシグラハン地区の子どもたちの問題解決・生活改善能力を高める。
実施した活動
@ 子どもたちのライフスキルの向上をめざした教育プログラム(計37回実施、延べ1,761人参加)
<内容>
映画上映、読み聞かせ、奨学生同士の相互交流ワークショップ、
ユース・サマー・リーダーシップ・トレーニング(青少年リーダー育成夏季キャンプ)、
(中学生による)大学訪問ツアーなど
A 保護者対象セミナー(計9回実施、延べ142人参加)
<内容>
地域のリーダーシップ、紛争解決 、ライフスキル指標 、 読み聞かせ、環境ワーク
ショップ、保護者の能力向上(家族の価値に関する批判的考察、プラスになるしつけVS体罰)
センドン台風被害支援(被災者支援)
B その他の子ども対象活動(計7回実施、延べ 71人参加)
<内容>
読解力養成プログラム、地域の子どもへのプレゼント会、保護者のスタディ・ツアー、
奨学生ミーティング、保護者ミーティング
C 事業の評価会議(計2回、延べ17人参加)
D 読書の推進(延べ4,217人が図書館を利用)
成果
ライフスキルの向上をめざした教育プログラムを通して、青年期の子どもたちが、学習意欲の維持向上を妨げる問題や悩みを認識し、建設的に考えることができた。また、保護者は、自分の役割を再認識し、本人や子どもたちの能力向上に対するモチベーションが高まった。 これらの結果、12人の子どもが進学を希望し、それが実現した(前年は3人、2012年6月時点)。