フィリピン・ごみ投棄場周辺コミュニティにおける、保健衛生・医療サービス向上事業
対象地域
フィリピン共和国:マニラ首都圏マニラ市トンド地区バランガイ105ゾーン8(通称スモーキーマウンテン)
背景
事業実施地であるごみ投棄場(通称スモーキーマウンテン)は、フィリピンのごみ投棄場の中でも大規模なものの1つであり、現在、1,500以上の簡素な家々が立ち並び、約1万人の人々が暮らしている。その多くが、分別されていないごみの中から再生可能な物を拾って廃品回収業者に売ることで生計を立てているが、収入は1日200円前後と少なく、1日3回の食事もままならない。
住民は、低収入など様々な問題を抱えているが、中でも過酷な労働環境と住環境から引き起こされる健康問題は最大の課題である。労働中の怪我、ごみ収集車などによる事故に巻き込まれることも多い。清潔な水を十分に得ることが難しく、感染症や、堆積したごみから出るメタンガスなどによる気管支系の病気(咳・喘息・気管支炎)がよく見られる。しかしながら、行政による保健医療サービスが受けられる施設は身近になく、些細な怪我や病気が深刻な事態に発展するケースが後を絶たない。
実施団体では2006年、地区内の保健・医療サービスの提供拠点となる「多目的保健センター」を建設した。2007年から地域住民1名を雇用し、日常的に保健衛生サービスの提供を開始。2009年には7名のヘルスワーカーを育成し、1)地域住民の健康相談、2)薬品の安価提供、3)病院搬送のサポート、4)地域巡回活動、5)保健衛生の知識普及活動を実施してきた。
現在、多目的保健センターを訪れる患者のうち3割程度が、医薬品等の不足により手当てができずにいる。本事業により、「多目的保健センター」のサービス内容を向上させると同時に、スタッフやヘルスワーカーのみならず、地区住民一人ひとりの保健衛生意識の向上をはかり、傷病の予防と初期治療を徹底していく。
目的
@ ごみ投棄場周辺コミュニティという衛生環境の中で厳しい生活を余儀なくされて生きる
人々に、基礎的な医療サービスや薬の提供を行い、傷病の重篤化を防ぐ。
A 予防・応急処置的な保健医療サービスが受けられるような仕組みを作り、それが住民
自身によって運営できるようにしていく。
B 住民の中でも母親たちを対象とした講習を通じて、住民自らが健康を維持する力を養って
いく。
C 地域内の団結を強め、地域課題に協力して取り組める基盤をつくる。
実施結果
@ 多目的保健センターの設備・医薬品・サービスの内容の向上
・医薬品と備品(ピンセット、吸入器、血圧計など)を購入した。
・水と石鹸を常備し、常に清潔な保健センターを整備した。
・薬草を使った治療や指圧による手当を実施できるようになった。
・約200名/月が利用するようになった。
A ヘルスワーカー(8名)のスキルアップと母親対象の講習会の開催
・保健衛生に関するスキルアップ講習会を実施(22回)
テーマ:「地域の健康問題の概要」、「痛みの原因と指圧について」、「火傷や怪我の
手当てについて」など
・地域在住スタッフとヘルスワーカーによる母親対象の講習会を開催した。(9回)
・参加した母親たちによる地域でのキャンペーンを企画、運営できるようサポートした。
その結果、母親たちは、2011年3月に、「手洗いキャンペーン」を開始した。