タイに居住するビルマ人難民に対する人権・民主主義に関する教育支援
対象地域
タイ王国:タク県メーソット市
背景
タイ国タク県メーソットには、長期支配が続く軍事政権による強制徴用、強制労働、女性や少女に対する暴力、人身売買等の人権侵害に苦しむ多くのビルマ人が流れ込んで来ている。その中には、ビルマの未来を担うべき青少年たちも多数存在するが、教育を受けることが出来ず、権利や人権という言葉すら知らない状況にあり、自らが被っている人権侵害についても疑問を抱かない者もいる。
実施団体では、2007年9月及び2008年2月にメーソットにあるビルマ法律家協会によって設立されたビルマを担う若者を教育するための学校「ピースローアカデミー」を訪問し、調査を行った。また、メーソットにあるメラ難民キャンプのビルマのカレン民族の難民たちからビルマ国内で受けた迫害の状況、及び難民としての現状に関するヒアリングを行った。調査の結果、ビルマの人権侵害状況を改善し、彼らの人権が保障されるためには平和で自由な生活を可能とする社会システムの実現が不可欠であり、そのためには、ビルマの人々の間に、人権保障及び民主主義の観念が広く普及すること、人権保障の観念を基礎に置いた次世代のリーダーを養成することが極めて重要であると結論に至った。本事業では、「ピースローアカデミー」で行われている人権保障、および民主主義に関する教育を、物的、人的に支援を行う。
目的
人的・物的支援を通じて、「ピースローアカデミー」における人権保障・民主主義に関する教育を充実させ、同教育の質的向上・規模的拡大を実現し、同校の運営に安定性・継続性をもたらす。
また、アジアその他の地域から新たに支援者・支援団体・講師などを募り、一層の教育内容の充実、及び「ピースローアカデミー」の運営体制の強化を図る。
実施結果
本事業は、2年生(2年制)の学生24名に対し、下記のカリキュラムを提供した。
@ 人権概念、個人の尊厳など人権保障、および民主主義に関する基本概念、
裁判制度、選挙制度、各国の状況などに関する講義の実施
A 生徒が裁判官、検察官及び弁護士役となり、刑事訴訟・民事訴訟などの
具体的な実施方法を体験するなどのロールプレイ、ケーススタディの実施
2年間の課程を修了した学生らは、難民キャンプで紛争調整官として働いたり、出身民族の団体で人権教育を行ったり、ビルマ国内に戻り弁護士になるために勉強を継続するなど、本事業を通してビルマの将来を担う若者の自立と成長に貢献することができた。