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フィリピン・ミンダナオ島における共生のための教育支援事業(継続3年目)

特定非営利活動法人 アジア日本相互交流センター(ICAN)

対象地域

 フィリピン共和国:ミンダナオ島コタバト州ジェネラル・サントス市

背景

 対象地域のミンダナオ島南部ジェネラル・サントス市は、産業が一部の資産家に占有され、約半数の世帯が経済的に困難な状況に置かれており、市内の多くの子どもは卒業まで学校に通うことができず、低学歴のために安定した職業に就くことも困難である。一方で、郊外の高地には先住民族ブラアンが住んでいるが、市内の人々は彼らに対し偏見を抱き、ブラアン民族は低地の人に対し不信感や劣等感を抱いている。イスラム教徒系住民とキリスト教徒系住民の不信感が拍車をかけ、この地を一層不安定な状態にしている。
 相互理解促進に向けて、実施団体では、本基金の助成を受け、2008年度、ジェネラル・サントス市周辺の背景の異なる子どもたちの連続ワークショップを実施した。2009年度は、子どもたちによる演劇にまとめ、演劇鑑賞会を開催し、映像教材を作成して市内の全学校に配布し、市内の子どもたち約6万人がジェネラル・サントスにおける共生の大切さを考える機会を得た。2010年度は、ジェネラル・サントスの子どもたち56人、及び、その中のコアグループを対象として「異民族研修」を実施し、ミンダナオ島に住む様々な民族の背景やそれぞれの関わりについて子どもたちがまとめ、「漫画平和教材」を作成する。
 ミンダナオ情勢は2008年8月以降、一時60万人の避難民が出るなど、さらに不安定なものとなっている。子どもたちの小さな「声」に基づく相互理解を地域での着実な平和活動につなげ、共生の灯を促進することが求められている。
 2009年末のミンダナオ島の一部における戒厳令の発令が象徴するように、同島の情勢は依然として不安定なものとなっている。本活動が、子どもたちの小さな「声」に基づく地道な平和活動の普及が今ほど求められている時はない。


目的

ミンダナオ島ジェネラル・サントス市に住む子どもたち自身の力によって、住民間に横たわる異民族間の差別や偏見が取り除かれ、「共に生きる」意識が高められ、同市の平和と安定に貢献するとともに、「子どもが主体の平和活動」としてのモデルを築き上げる。



実施結果

@ 研修の実施
     ジェネラル・サントスの子どもたち53名を対象に、下記の各種研修を行った。
      ・異民族研修(計2回実施し、のべ98名が参加)
      ・フィールド研修(計5村で実施し、15名が参加)
      ・漫画平和教材製作ワークショップ(計4日間、のべ45名が参加した)
A 「漫画平和教材」の作成
     フィールド研修と漫画平和教材製作ワークショップの経験を経て、子どもたちが訪問
     した5つの民族についての教材の原案を作成した。その原案を基に、「漫画平和教材」
     を2,000部発行した。
B 「漫画平和教材」の配布
     2011年2月に教育省にて「漫画平和教材」の贈呈式を実施し、学校内のすべての教員
     や生徒が閲覧できるライブラリ・ハブ(教材図書館)に1,000部を寄贈した。また、
     ピキットやマニラの小学校・高校に残りの1,000部を配布する。これにより、小学生
     約73,000名と高校生約35,000名が本教材を利用して相互理解を促進することが見込
     まれる。
C 奨学金・カウンセリングの提供
     ジェネラル・サントスの経済的貧困家庭の高校生50名、大学生3名に対して、学校経費
     と学用品を提供し、高校生3名に対して入院費を提供した。
     また、同じく高校生50名、大学生3名に対してソーシャルワーカーによるカウンセリング
     を計154回行った。
D 子どもと保護者の総会、子どもミーティングの実施
     子どもと保護者の総会(1回、子ども50名、保護者30名が参加)と子どもミーティング
     (計2回、各53名が参加)を行った。