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ラオスの小学校への図書袋配布による読書推進事業(2001年度)
絵本制作に関わる人材育成事業(2002年度)
読書推進運動 教員養成校における人材育成事業(2003年度)

ASPBラオスの子どもに絵本を送る会(現:(特活)ラオスのこども)
野口朝夫さん(事務局長)/ 猿田由貴江さん(担当スタッフ)
  • - 活動を始めた頃、ラオスにおける出版状況はどのようだったのですか?

ラオスには、まず本屋というものがありませんでした。現在でも首都のヴィエンチャンでさえ、本屋は一軒しかありません。学校には図書室はもちろんのこと、図書自体がなく、子どもたちが本に接する機会はきわめて稀な状況でした。1990年に私たちがラオス語の本を約2万冊作った後になって初めて気づいたのですが、ラオスには本の流通市場が全くありませんでした。作っても売る場所がないだけでなく、本を子どもたちに届けるシステムもありません。これには私たちも驚きました。

たまに出版されるもののほとんどが大人向けの本か政府の報告書で、当初は年間20冊出版されるかどうかという程度でした。1990年にラオス国立図書館が「全国の小学校に図書を」を合言葉に読書推進運動を始め、92年から私たちはその運動に協力して、図書や図書袋(図書約 70冊を簡単に持ち運ぶことが出来る袋)の配付を行い、配付の際には併せて図書担当教員へのセミナーを実施し始めました。

  • - ASPBラオスの子どもに絵本を送る会がラオスの人々を支援し始めたきっかけは何ですか?

当会の共同代表であるラオス出身のチャンタソン・インタヴォンは、日本で教育学を学び、ラオスでも教育関係のキーパーソンとのネットワークを持っていました。彼女が日本で子育てをする中で、「日本では子どもたちの絵本がこんなに沢山あるのに、ラオスの子どもたちには、このような人生の幅を広げる絵本に出会うチャンスがない」と強く感じたことから、彼女は1982年に当会を設立し、当初は日本で出版されている絵本を、ラオス国立図書館を通 して寄贈する活動をしていました。

やがて1992年からラオス国立図書館の読書推進運動に協力するようになり、その後、長年にわたりラオス国立図書館をカ ウンターパートとして活動を続けてきました。

  • - 今井基金の支援によってどのような活動を展開していますか?

当会の活動には4つの柱があります。それは、・ラオス語図書の出版、・図書の配付、・学校図書室整備、そして・子ども文化センターの開設・運営支援です。2001年度に今井記念海外協力基金から助成された「ラオスの小学校への図書袋配布による読書推進事業」は、2番目の柱である『図書の配付』の一環として の活動です。2002年度の「絵本制作に関わる人材育成事業」は、1番目の柱である『ラオス語図書の出版』の担い手育成の一環として、そして、2003年度の「教員養成校における人材育成事業」は、3番目の柱の『学校図書室整備』で2001年から実施していた教員養成校での読書推進セミナーを一つの事業と して今井基金の支援を受けました。

  • - 事業を通して達成したいことは何ですか?

ラオスの子どもたちの教育環境を向上させることがいちばん大切な目標です。そのために、図書の出版や普及、人材育成、そして子どもが集い遊び学べる場の支援などを実施してきました。

「図書袋配布による読書推進事業」
本を学校で配付することによって子どもたちの読書する機会を増やすと同時に、図書配付時に担当教員を対象にした読書推進セミナーを開催することによって、学校で継続的に図書が活用されるように工夫しました。

「絵本制作に関わる人材育成事業」
創作絵本コンクールを実施しています。それは優秀作品を出版することで、まずラオス人の本の作り手(作家・挿絵家・編集者)を育成すること。そして子どもたちにより多くラオスの民話をもとにした絵本に触れてもらうことを目的にしています。

「教員養成校における人材育成事業」
教員養成校で勉強している教員の卵を読書の推進役として育成することで、継続的な読書普及を図っています。

  • - 事業を推進していく中で、何かトラブルはありましたか?

「図書袋配布による読書推進事業」は、既に10年近くの実績があったので、特に問題はありませんでした。事業実施中ではなく活動を始めた当初のことですが、図書を学校に配付しても、先生自身が図書に触れた経験がないので、実はどう扱っていいか分からずしまい込んでいたということが分かりました。

それ以来、本の使い方や図書館業務、読書推進の仕方などを先生に教育するためのセミナーを図書と図書袋配付の時に一緒に実施しています。「絵本制作に関わる人材育成事業」では、当初は絵本コンクールの優秀作品3作を出版することを計画していましたが、応募作品の多くが作品として水準に達していなかったので、入選作から2冊出版することにしました。さらに、受賞したどの作品も絵がなく物語だけだったので、新人の画家を起用し、文章とともに数回に渡って手直しを指導 しました。

そのため、大幅に出版が遅れてしまいました。また、「教員養成校での人材育成事業」では、養成校で使用するテキストを作っていたのですが、内容が難しすぎるという声があがり、数回にわたって加筆修正。こちらも完成が遅れました。でも、彼ら自身によって、実践的な図書指導について具体的な議論がなされたのは大きな前進と言えます。

  • - 現地の人々は読書推進事業に対して積極的に関わっていますか?

読書推進事業は、先ほど述べたように10年以上の実績があります。その中で、現地のスタッフが試行錯誤の末、重い木製の図書箱の代わりに布製の図書袋を開発 し、改良を重ねてきました。この図書袋は、女性の先生がリュックにして簡単に持ち運びでき、壁の無い学校でも吊り下げることができるようにと開発されたものです。使いやすいと、現地で非常に好評で、当会の中心的な活動となっています。

読書推進セミナーでも、県教育局の職員や郡教育指導官が参加して一緒に教 員の指導をするなど、積極性が見られました。教員養成校での人材育成事業では、各養成校が全面 的に協力してくれ、セミナーの受講者の態度も非常に熱心で、疑問点があれば受講時間が終わっても講師に質問して学ぶなど、熱意をもって取り組む姿が印象的でした。

  • - 読書の習慣がなく、出版物も非常に少なかったラオスで、この事業は人々の本に対する意識をどのように変えてきましたか?

「図書袋配布による読書推進事業」の終了後、事業によってどのような変化があったかについて調査しました。
その結果 、子どもたちの学習意欲や教員の教育への意欲が高まったり、読書の重要性に対する親の認識が高まるなど、さまざまな効果があることが分かりました。この事業は、2003年からのJICA((独)国際協力機構)開発パートナー事業につながっています。今井基金から助成を受けた事業の成果があったからこそだと思います。

「絵本制作に関る人材育成事業」では、図書と作家が不足していることを改めて認識する良い機会となったようです。自費出版をする作家や、事業に関った関係者が個人的に出資して作家の出版を応援するなど、出版社的役割を果たす者も出てきました。また、「教員養成校における人材育成事業」では、2007年から、読書推進活動が教員養成校のカリキュラムに正式に取り入れられることになり、ますます運動の裾野が広がっています。

  • - この支援事業によって、多くの才能が育っているそうですね。

創作絵本コンクールの受賞者で受賞作品を出版した新人作家が、現在、次の作品に挑んでいます。現在も若手作家・挿絵家の発掘・育成事業は継続的に行ってお り、当会が出版した最新作の絵本では17歳の少年が挿絵を描いています。作家・挿絵家という職業がまだ育ちにくいラオスで、こうして新人が生まれ、育っているのはとても嬉しいことです。

他には、教員養成校での読書推進セミナーの受講生で、その後小学校に赴任し、現在は教頭先生にまで昇進した人もいます。読書推進運動の中心的な実践者兼管理者として活躍しており、この先生がいる小学校では、子どもたちが読書に触れる機会が他の小学校に比べて非常に多いということです。

  • - どうもありがとうございました。