貧困層からのリーダー育成事業
対象地域
フィリピン: セブ州セブ市内
背景
実施団体は、貧困層の子どもに教育の機会を与え、大学卒業まで徹底した教育支援を行うことで、貧困の苦しみを知る人材がこの国の問題を自らの手で根本解決できるリーダーとなれるよう活動している
フィリピンには絶対的な貧富の差があり、貧困層が努力をしても報われることが難しい社会構造が存在する。大学進学率は35.5%と低く、大卒者でも失業率は19.6%(UNESCO・2021年)と高い。富裕層に比べ低所得者層の占める割合が高く(前者1.4%、後者58.1%)、貧困層は大学に進学することが難しい上に卒業後に安定した仕事を得ることも難しい。
そのため、1日あたりの収入が3.2ドル以下の貧困状態にあるとされる国民の割合が20.8%(世界銀行・2019年)と、高く、新型コロナウイルス感染症の流行により、状態はさらに悪化した。
教育の面では、コロナ禍で2年半にわたり学校の対面授業が禁止され、オンライン授業やプリント配布のみの授業が続いた。急激な環境の変化により、若者(15〜24歳)のうち7.5%が自殺企図を経験し、うち60%は相談相手をもたない(フィリピン大学による調査・2022年)。その上、2021年末にスーパー台風がセブ島を直撃し、地域によっては数か月に渡る停電や断水が起き、子どもたちにとっても非常に厳しい時期が続いた。そのような状況下で、実施団体は奨学生に対し、緊急的な食料支援、家屋修復のための部材提供などの包括的な支援を行い、奨学生は進級率・大学進学率ともに100%を達成している。
実施団体は2022年、カレタ墓地、イナヤワンゴミ処理場に次ぎ、ラプラプ市のゴミ処理場で3か所目となるラーニングセンターを開設し、有資格職員による最貧困層の子どもたち75人への学習支援を継続している。また、定期的に奨学生とセンターの子どもたちの交流を図っており、特別授業の実施や、センターの子どもたちの日常を世界に発信するドキュメンタリー動画の制作を行った。これらの交流を通じて、奨学生は自分たちよりもさらに過酷な環境に生きる子どもたちのために、何をしていくべきなのかを真剣に考える機会を得、未来のリーダーとしての資質を磨いている。活動の拡大と充実の反面、現在、急激な円安によるペソ建て活動費の減額、それに反して物価・人件費・燃料費等の高騰が顕著であり、団体の活動は厳しさを増している。しかし、このような困難な状況が続く中でも、引き続き「未来のリーダー育成」に注力し、奨学生たちが学習を継続できるよう支援を続けていく。
事業目的
- 奨学生から未来のリーダーを育成する
- 奨学生に対する昼食提供の再開と栄養指導
- ラーニングセンターの子どもたちとの交流を通じて課題解決を学ぶ
事業内容
1. 奨学生への継続学習支援(50人、小3〜)
・奨学金、学用品等の支給
・週末特別授業(毎週土曜日に英語・算数・日本語を有資格教員が指導)、放課後施設開放
・ソーシャルワーカーによるメンタルケア
2. 奨学生への昼食提供と栄養指導(小中学生には管理栄養士監修の昼食を提供、高校・大学生には現金支給+栄養指導)
3.ラーニングセンターの子ども(3か所、計75人)との交流を通じた課題解決
(上記のうち、高校10人の学費支給、奨学生(50人)の昼食提供・昼食費支給を当基金が支援)