First aid for Family Project 家族を対象とした応急手当や家庭医学の教育
対象地域
ネパール:第五州 ダーン郡 ラジプール自治体
背景
支援対象地のラジプール自治体(人口2万7千人)は、首都から400km離れたネパールの典型的な僻地であり、医療サービス不足に悩まされてきた。実施団体は、医師不在で医療機関も不足する僻地の医療サービスへのアクセス向上を実現するため、現地NGO・Karma Healthと共に、コミュニティとITの力を活用した新しい医療提供モデル“Rajpur Model構築”を提唱し、実装に向けて「Rajpur Project構築事業」に取り組んできた。その中で、Karma Healthと自治体が連携し、医療機関の受診促進、医療情報・患者情報の管理、収集した情報の公衆衛生課題介入への活用などを一貫して行い、コミュニティ内で一定のケアが行える体制を構築している。
一方で、現地側のニーズ調査では、“医療”の対象となるような疾病等は現状のモデルで対応できるものの、体調不良時の家庭でのケアやセルフ・ケアが適切に行われておらず、地域の健康アウトカム向上の足枷となっている可能性が高いことが確認された。実際に怪我や下痢などが発生した際に、適切な初期ケアが行われていないため、後遺症が残ったり、医療を必要とする重篤な状況になるケースがある。これは、「対策が必要な病気になっても病気自体を理解できない」「対策を伝えられてもその意義が把握できず実行できない」など、家庭医学の知識を含む基本的な保健知識不足が原因である。
この最大の要因は、医療知識を学ぶ場が全くないことであると考え、本申請事業では、基礎的な健康・医療教育に取り組む。現地住民は経済的理由から地元の学校に通っているケースが多いが、日本とは異なり「保健」の授業がなく、基礎的な医療知識すら学ぶ機会がない。また、家庭においてもそうした知識は有していない。本事業では、家族の繋がりが強いという特性を活かし、中学校(生徒数約500人、教員20人)を起点に予防・初期ケアを行うための基礎的な医療知識(First Aid)を学ぶ場を提供し、家族に波及させることで、家族内(“Family-based”)ケアが行える状況の創出を目指す。
目的
- 住民自身が応急手当や家庭医学の知識と技術を身につけることで、医療へのアクセスが限られた地域においても、自分の家族の命と健康を守れる社会を作る
- Rajpur Model構築事業により充実させるケアを受けた住民が、そのケアの意義を理解し、実践できるようになることで、狙い通りの効果を生める環境を作る
- 教育コンテンツを現地住民と共創し、現地住民自らで教育体制を維持できる体制を作ることで、基礎的医療の教育を現地に根付かせる
- 僻地での家庭の医学や応急処置の教育活動を通して、他地域にも普及できるような基本的なモデルを構築し、その他の僻地でも応用可能なオペレーションやコンテンツを整えることで、さらなる発展や波及効果も期待できることを目的とする。
事業内容
@教育コンテンツ作成
A事前研修会の実施(対象:Health Postスタッフ、Community Health Worker(CHW))
B学校での研修実施(対象:生徒・教員)
C研修対象校の拡大