フィリピン・ミンダナオ地域の貧困層に向けた映像教育支援事業
対象地域
フィリピン:カガヤン・デ・オロ市、及びカミギン州
背景
事業対象地域は元紛争地域であり、政情的に不安定な側面を持ってきた。また、2011年の台風センドンの影響を受け、若年層の50%近くが高校を中退しており、教育を始めとした格差が大きな課題になっている。
これに対し、現地教育局は中退した生徒に対して無料教育プログラムを実施しているが、使用するテキストに解説がなく難解で、教師の数が不足していることなどを理由に、生徒の成績や卒業率の向上に繋がっていない。実施団体は、映像授業という教育手法を通して、低コストで質の高い授業を提供し、ミンダナオの高校生及び教師の学力向上を目指し、現地教育局と現地大学機関とパートナーシップを結び事業を展開している。
2015年7月、中退者向けの無料教育プログラムを全教育局が設置し強化に取り組んでいく法律が制定され、フィリピン全土で中退者の課題解決に向けた機運は高まりつつある。実施団体は2015年度に物理と7-8年生の数学の映像授業を現地教員とともに作成し、映像授業を授業中のみならず放課後の自主学習でも活用できる環境を複数の学校で整えた。さらに、映像授業を利用できる環境を学校以外にも拡大している。
2016年には、日系教育企業と連携し、より質の高い映像授業の作成に着手するとともに、10年生の数学の映像授業を作成した。さらに、2017年には現地大学機関とパートナーシップを結び、大学生が生徒の学習サポートに携わる「チューター制度」を導入した。
目的
フィリピン・ミンダナオ地域において、誰もが基礎学力を習得(高校を卒業)できる社会を目指す。現在は50%以上の中学生が学校を卒業できていないが、3年以内に高校卒業率75%以上を目指す。将来的には、e-Educationが現地から撤退したとしても、現地でその教育支援サイクルを回すことができるような成功モデルを創出する。
その過程において、生徒の学力向上に加え、教師の指導力向上のためにワークショップやトレーニングを開催し、持続的な発展に寄与するように務める。さらに、将来教師となる現地大学生の育成にも着手し、教師としてのスキルや社会貢献に対するマインドも育む。ミンダナオ地域での事業実施によって、映像教育活用の成功モデルを創出し、他地域への波及拡大につなげることを目指す。
事業内容
1.質の高い映像教材・補助教材の開発(教育局と協働)
2. 授業の実施とモニタリング
3. 学習効果の測定・分析
4. 教師を対象としたワークショップの実施
5. 大学と連携した学習サポートの拡充
6. 活動の成果のまとめと発表(カンファレンスの実施、他地域展開についての政策提言等)