保健体育と生理に関する教育指導者の派遣
対象地域
ネパール:西部開発地域ガンダキ県カスキ郡ポカラ市
背景
ネパールでは、公教育において、保健体育教育が十分に行われていない。教育課程の中に位置づけられてはいるが、教師に学習の体験がなく、指導ができていないためと考えられる。
一方、ネパールの中西部開発地域・極西部開発地域には、生理時の4〜5日間、家の中に入れず、屋外のチャウパディ・ゴート(生理小屋)で過ごさなければならない悪習が残っている(以下、「チャウパディ慣習」)。生理時の女性たちは家畜同様とみなされ、睡眠やミルク、ヨーグルト、バター、肉類等の栄養食品の摂取、公共の場に出ること、水や食物に触れること、他人に触ることなどが禁じられている。このため、生理期間中は学校に行くこと、村の道を歩くこともできない。2007年にはネパール政府が「チャウパディ慣習根絶令」を発令したが、極西部開発地域、中西部開発地域では、改善が見られず、厳しい現状が続いている。
実施団体は、2006年、女性教員を養成することを目的に、対象地域ポカラ市のポカラ女子大学内に「さくら寮」を開設し、小学校教師を目指す遠隔地域の少女らへの支援を行っている。実施団体から支援を受ける少女ら(以下、「さくら寮生」)の出身地の多くは、西部開発地域、中西部開発地域、局西部開発地域で、さくら寮生の多くも「チャウパディ慣習」を体験している。さくら寮生からは、慣習を問題視する声が上がっており、慣習の根絶の取り組みの実施には前向きである。
本事業では、さくら寮生に対して、保健体育教育の実践方法を指導するとともに、寮生らの出身地域でいまだ残る「チャウパディ慣習」の実態を調査し、解決策の検討を行う。
目的
@遠隔地域の小学校教員になるさくら寮生たちが、保健体育、スポーツ、レクリエーションの
指導方法を学ぶことで、遠隔地の子どもがスポーツの楽しさを知り、体力の増進を
はかれるようにする。
Aさくら寮生たちが、チャウパディ慣習がいかに女性の人権を踏みにじる不合理な悪弊である
かを科学的に学習し、理解し、その根絶のために、自らの出身地の遠隔地域の学校で、
その啓発活動の推進者となり、地域住民の意識変革を図ることができるようになることを
目指す。
実施した活動
@保健体育教育の実践方法の指導
小学校教員をめざす女子大学生(「さくら寮」生徒)20人に対して、女性の身体の仕組みについての講義と、バスケット・ボールを事例としてスポーツの実技指導を行った。
Aチャウパディ慣習の実態調査と解決策の検討
ネパールの中西部・極西部に残る「チャウパディ慣習」の実態把握のために、農村地域での調査を行った。
また、11月にさくら寮の在校生・卒業生(小学校教員)が集まる会議において解決策の検討を行い、下記が挙げられた。
[まずは自分がチャウパディ慣習を止める/小学校での教育を通じて啓発する/教科書に掲載するなど学校教育の中へ組み込むよう訴える]